2018年8月30日 (木)

皮膚病雑記帳No.216


西洋薬にも証がある


 ツムラ社の医学雑誌、「漢方と診療」の最新号を読んでいたら、大分の織部和宏先生の連載コーナーのタイトルが「西洋薬にも証がある」となっており、興味を覚え読んでみました。

証と言えば、漢方の重要用語になりますが、西洋薬の降圧剤の中には顔がほてったり、鎮痛剤の中には体を冷やしてしまうものがあります。そのような薬剤特有の性質を西洋薬の証と捉えておられるのだと思います。

 副作用が出た場合に薬を止めてしまえば済むことですが、その薬がよく効いていて、どうしても止められない場合などには我慢して服用しているケースもあります。織部先生はそういった副作用を軽減したり、消失したりするのに漢方薬で対応されています。降圧剤で顔がほてる患者さんには黄連解毒湯を、鎮痛剤で体が冷えてしまった場合には真武湯を処方されているようです。文中に患者さんの副作用の訴えに耳を貸さず我慢しなさいと言う、西洋医学一辺倒の開業医が登場します。近頃は自分の治療が一番と思っている医者が多いのかもしれません。

漢方薬で西洋薬の副作用に柔軟に対応できればと思います。皮膚疾患に処方する西洋薬には眠気や胃腸障害を起こしてしまうものが多いようです。これも西洋薬の証でしょうか。このような副作用を軽減できる漢方薬を探してみようと思います。

2018.8.30記載

2018年7月31日 (火)

皮膚病雑記帳No.215


間質と三焦

 6月に第69回日本東洋医学会学術総会が大阪で開催されました。いろいろと有益な講演を聴くことができましたが、最も印象に残ったのは、あるシンポジウムの中で聴いた、間質と三焦が同じものであるだろうという内容でした。

間質とは生体内のある機能をもつ組織や器官などの実質を、支えたり結合させたりする組織、血管や神経などを含むとなっています(大辞林より)。今年の3月に科学誌『Scientific Reports』に人間の器官で最大とされてきた皮膚を上回る大きさの、新たな器官が発見されたことが報告されたことが話題になっています。全身の細胞同士の間にある空間の「間質」と、それを満たす体液「間質液」を器官に格上げしようとされています。

 また三焦とは、現代医学にはない器官で、その働きは津液(水)を臓腑に巡らす作用を司る腑と考えられています。腑としての三焦の実体については古来より論争されていますがいまだ定説はありません。その機能と部位から考察すると胸膜や腹膜などの膜組織を指しているにではないかと考えられているようです(高山宏世著、弁証図解 漢方の基礎と臨床より引用)。

 西洋医学における間質は東洋医学における三焦と若干異なるものの、ほぼ同じものを指しているようです。東洋医学がすでに数千年前に三焦を臓器と捉えていたことを、ようやく西洋医学が間質を臓器として認識したことは、西洋医学が東洋医学に少し追いついてきたのかなと思ったりします。

2018.7.31記載

2018年6月30日 (土)

皮膚病雑記帳No,214


皮疹の部位によって特定の漢方処方が有効

皮膚疾患の皮疹の部位によって特定の漢方処方が有効なことがあります。西洋医学ではある薬が特定の皮疹に効果を発揮することはまず無いようです。これまでに漢方治療を行い有効であった症例の中に、顔面、特に眼瞼の皮膚炎に梔子柏皮湯、口囲の尋常性座瘡(にきび)に六君子湯、頚部のアトピー性皮膚炎に辛夷清肺湯がそれぞれ奏効した症例を経験しました。

 顔面、特に眼瞼の皮膚炎に梔子柏皮湯が奏効した症例では、五臓(肝、腎、心、肺、脾)の心の異常に対して梔子柏皮湯が有効でした。眼と眉の間の色の変化によって、その人の病気がどこにあるかを知ることができます。青は肝、白は肺、黄は脾、黒は腎、赤は心となっています。眼瞼の皮膚炎で赤くなっている場合には心の異常が考えられます。

 口囲の尋常性座瘡に六君子湯が奏効した症例では、脾の異常に対して六君子湯が有効でした。それぞれの臓は、主に症状が現れる場所が決まっていて、顔のどこに変化が出たかで病のある臓がわかります。眼は肝、耳は腎、舌は心、鼻は肺、唇は脾と関連しています。脾の異常は唇に変化が現れるので、口囲に尋常性座瘡が発症した場合は脾の異常が考えられます。

 
頚部のアトピー性皮膚炎に辛夷清肺湯が奏効した症例では、鼻や副鼻腔の炎症に奏効する辛夷清肺湯が解剖学的に近い頚部の皮膚炎に有効であったと考えられました。

 皮疹の部位によって処方を変えることは治療の選択肢が増えることになり、よりきめ細やかな治療が可能になります。

        (高山宏世著、弁証図解 漢方の基礎と臨床、近藤享子、第65回日本東洋医学会学術総会シンポジウム6「全人的にみた皮膚科治療」を参考)

2018.6.30記載

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