2018年6月30日 (土)

皮膚病雑記帳No,214


皮疹の部位によって特定の漢方処方が有効

皮膚疾患の皮疹の部位によって特定の漢方処方が有効なことがあります。西洋医学ではある薬が特定の皮疹に効果を発揮することはまず無いようです。これまでに漢方治療を行い有効であった症例の中に、顔面、特に眼瞼の皮膚炎に梔子柏皮湯、口囲の尋常性座瘡(にきび)に六君子湯、頚部のアトピー性皮膚炎に辛夷清肺湯がそれぞれ奏効した症例を経験しました。

 顔面、特に眼瞼の皮膚炎に梔子柏皮湯が奏効した症例では、五臓(肝、腎、心、肺、脾)の心の異常に対して梔子柏皮湯が有効でした。眼と眉の間の色の変化によって、その人の病気がどこにあるかを知ることができます。青は肝、白は肺、黄は脾、黒は腎、赤は心となっています。眼瞼の皮膚炎で赤くなっている場合には心の異常が考えられます。

 口囲の尋常性座瘡に六君子湯が奏効した症例では、脾の異常に対して六君子湯が有効でした。それぞれの臓は、主に症状が現れる場所が決まっていて、顔のどこに変化が出たかで病のある臓がわかります。眼は肝、耳は腎、舌は心、鼻は肺、唇は脾と関連しています。脾の異常は唇に変化が現れるので、口囲に尋常性座瘡が発症した場合は脾の異常が考えられます。

 
頚部のアトピー性皮膚炎に辛夷清肺湯が奏効した症例では、鼻や副鼻腔の炎症に奏効する辛夷清肺湯が解剖学的に近い頚部の皮膚炎に有効であったと考えられました。

 皮疹の部位によって処方を変えることは治療の選択肢が増えることになり、よりきめ細やかな治療が可能になります。

        (高山宏世著、弁証図解 漢方の基礎と臨床、近藤享子、第65回日本東洋医学会学術総会シンポジウム6「全人的にみた皮膚科治療」を参考)

2018.6.30記載

2018年5月30日 (水)

皮膚病雑記帳No.213

経絡

 漢方を学んでいくと、避けて通れないキーワードの一つに『経絡(けいらく)』があります。経絡とは人体の気、血、津液(水)が運行する際の通路で、正常な気、血、津液(水)だけでなく、病邪もまた経絡を通って侵入、伝搬して臓腑を侵襲します。

 経絡は現代医学の観点から見ると、神経、血管、リンパ管、および内分泌系などの機能を包括していますが、それだけでは経絡の持つ機能の総てを説明することはできません。経絡学説は西洋医学からすると非科学的ですが、やはり漢方医学独特の重要な基礎理論の一つとして理解すべきです。経絡に関する知識を駆使すると、弁証(証を決めること)に際してより高度な理解や深い考察が可能となります。

 例えば、帯状疱疹神経痛は神経の走行に沿って出現しますが、漢方医学では、背中が痛むか、お腹が痛むかで処方を変えることができます。それは背中とお腹では経絡が異なるからです。背中は太陽系、お腹は太陰系になります。また経絡は五臓(心、肝、肺、脾、腎)と関連していて、心、肺は手経(上肢)と関連し、脾、肝、腎は足経(下肢)と関連します。皮膚病では上肢に皮疹があるか、下肢に皮疹があるかで処方を変えることができます。さらに上肢では肘の表か裏か、下肢では膝の表か裏かで経絡が異なっていて、処方を変えることができ、より細やかな治療が可能になります。

 経絡を学ぶと、東洋医学が西洋医学よりきめ細やかな医療であることを認識させられます。

            (一部、高山宏世著、弁証図解 漢方の基礎と臨床から引用)


2018.5.30記載

2018年4月28日 (土)

皮膚病雑記帳No.212

攻めることと守ること、パート2

 2年前の3月のブログに『攻めることと守ること』というタイトルで、攻める漢方薬と守る漢方薬について書きました。今回はその処方の使い方について説明したいと思います。

 
漢方薬には大雑把に分けて攻める薬と守る薬があります。前回のブログにも登場した花輪壽彦先生(北里研究所所長)はテキスト『漢方診療のレッスン』で、「攻める治療」は「瀉」(取り除く意味)の治療を言い瀉剤を用い、「守る治療」は「補」(抗病力を鼓舞する意味)の治療を言い、補剤を用いるとされています。

 攻める薬と守る薬の使い方ですが、花輪先生は、瀉剤を用いて補剤を用いるのは、「つっかい棒」を取り除き、体力を補う、どちらかといえば外科的両方を優先するやりかたで、補剤を用いて瀉剤を用いるのは、体力を十分補ってから、悪いものを取り除く、どちらかというと内科的な方法であると言われています。そして治療の実際では、こじれた病態になると単純な処方の出し方ではうまくいかない場合が多い。そこで処方の性格をよく知って、コンビネーション治療によって錯綜した病態を修復しなければならなくなると書かれています。

 私の場合は最初から瀉剤と補剤の両方を使う2剤併用療法をすることが多いです。どちらが効いたか分からないという指摘もあるかもしれませんが、瀉剤は体の表面に効き、補剤は体の裏に効くイメージを持っているので、同時に使うことは問題ないと思っています。また最初から瀉剤と補剤の両方を使うことで、症状の改善が早いように感じています。

2018.4.28記載

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