2018年10月31日 (水)

皮膚病雑記帳No.218

フレイルと漢方薬

 今月27日に松江市で開催された八雲漢方研究会で「フレイルと人参養栄湯」という演題で鹿児島大学漢方薬理学講座特任教授の乾 明夫先生に講演して頂きました。フレイルとはサルコペニア(骨格筋委縮)が根幹をなし、体重減少、疲労感、活動度の減少、身体機能の減弱、筋力の低下などの症状が現れた状態のことです。2~3年ほど前から話題になり、最近世間で認知されるようになってきました。

 人参養栄湯は、補中益気湯、十全大補湯とともに補剤を代表する漢方薬です。これまでは補中益気湯、十全大補湯ほどは処方されていなかったようですが、フレイルを改善する方剤としてよく処方されるようになりました。

 講演の中で印象に残った話は、人参養栄湯は認知症にも効果があり、認知症によく処方される抑肝散との併用も効果的であること、筋力を高める効果が動物実験や臨床調査で認められていて、老化による筋力低下を阻止できること、そして老化を防ぐ造血幹細胞を刺激して老化自体を遅らせる可能性があることなどでした。

  人参養栄湯の保険で認められる効能、効果は病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血などとなっていますが、もっと幅広い病態に使用されるべき漢方薬の一つと思います。

2018.10.31記載

2018年9月30日 (日)

皮膚病雑記帳No.217

近年の尋常性乾癬の西洋医学的治療と漢方治療 

 重症の尋常性乾癬の治療は近年、生物学的製剤を使った抗体療法が花盛りです。開業医には副作用が出た際のコントロールが難しいため、その治療は大学病院や基幹病院の皮膚科で行われています。また開業医でも処方可能な、尋常性乾癬の患者さんで低下しているcyclic AMPを上昇させる内服薬のアプレミラスト(オテズラ)も1月程度で劇的に効く症例があります。これまで使っていた外用剤が不必要になるケースもあります。

 これらの治療に共通しているのはある異常なポイントだけを捉えて、そこを攻撃すれば治るという発想で薬剤が開発され使われていることです。従来からの、原因を見つけそれを除去するという西洋医学的発想によるものです。現在これらの治療が隆盛していますが、長期間の観察期間が過ぎて思いもかけない副作用が現れないか心配です。

 ところで尋常性乾癬にこれまで大柴胡湯、温清飲、桂枝茯苓丸などの漢方薬を処方して有効な患者さんがいました。効果が出現するのはかなりゆっくりで、患者さんにはもどかしいかもしれませんが、西洋医学的治療のような副作用が出る可能性は低く、体に優しい治療です。

 劇的に効く西洋医学的治療とじっくり効く東洋医学的治療を、上手く組み合わせて治療できればと思います。

2018.9.30記載

2018年8月30日 (木)

皮膚病雑記帳No.216


西洋薬にも証がある


 ツムラ社の医学雑誌、「漢方と診療」の最新号を読んでいたら、大分の織部和宏先生の連載コーナーのタイトルが「西洋薬にも証がある」となっており、興味を覚え読んでみました。

証と言えば、漢方の重要用語になりますが、西洋薬の降圧剤の中には顔がほてったり、鎮痛剤の中には体を冷やしてしまうものがあります。そのような薬剤特有の性質を西洋薬の証と捉えておられるのだと思います。

 副作用が出た場合に薬を止めてしまえば済むことですが、その薬がよく効いていて、どうしても止められない場合などには我慢して服用しているケースもあります。織部先生はそういった副作用を軽減したり、消失したりするのに漢方薬で対応されています。降圧剤で顔がほてる患者さんには黄連解毒湯を、鎮痛剤で体が冷えてしまった場合には真武湯を処方されているようです。文中に患者さんの副作用の訴えに耳を貸さず我慢しなさいと言う、西洋医学一辺倒の開業医が登場します。近頃は自分の治療が一番と思っている医者が多いのかもしれません。

漢方薬で西洋薬の副作用に柔軟に対応できればと思います。皮膚疾患に処方する西洋薬には眠気や胃腸障害を起こしてしまうものが多いようです。これも西洋薬の証でしょうか。このような副作用を軽減できる漢方薬を探してみようと思います。

2018.8.30記載

«皮膚病雑記帳No.215

最近のトラックバック

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ