2017年6月30日 (金)

皮膚病雑記帳No.202

ちょっとマニアックな漢方治療

 長年漢方治療をしていると、教科書的な処方では物足りなくなり、ちょっとマニアックな処方をするようになってきました。マニアックとしてしまうと、漢方に詳しい医師や患者さんに、「その処方、どこがマニアックなのですか?」と言われそうなので、ちょっとをつけさせてもらいます。

 アトピー性皮膚炎では私は真武湯という処方をここ数年よく処方するようになりました。一見実証タイプなのに、体の中が冷えているいわゆるかくれ虚証の人によく効きます。腹診をしてみると腹壁が冷えていることが多いようです。また舌診では舌に歯型が付く歯圧痕を認めることが多く、水分代謝がよくないようです。もう一つ、アトピー性皮膚炎で瘀血(おけつ、血液の巡りが滞ること)が強い患者さんに通導散を処方することがあります。これは最強の駆瘀血剤で証が合わないと下痢したりします。証が合えばとてもシャープに効きます。代表的な駆瘀血剤には桂枝茯苓丸や当帰芍薬散がありますが、通導散に比べれば、気楽に処方できる分、効果はマイルドです。

にきび(尋常性痤瘡)に対しては六君子湯という処方をよく使います。口は胃腸と繋がっていので口の周りのにきびの患者さんは胃腸の悪い人が多く、六君子湯は胃腸の働きを良く薬なので、胃腸をすればにきびが良くなるというわけです。

他にもまだちょっとマニアックな処方がありますが、このあたりで。マニアックと思われなかったら漢方に詳しい方です。
 

 
2017.6.30記載

 

2017年5月30日 (火)

皮膚病雑記帳No.201

●構成生薬の比率

 皮膚疾患に対して2種類の外用薬を混ぜて処方することがあります。その際、混ぜる薬の割合が重要で、知識、経験で割合を決めています。例えば水虫で炎症をおこしている場合には抗真菌剤を主体に少し炎症を抑えるステロイド剤を混ぜて処方します。炎症の程度によりステロイドの分量を加減します。

 先日高山宏世先生の『傷寒論を読もう』を読んでいたところ、麻黄湯の解説の中で、「麻黄湯内の諸薬の分量比は、麻黄三に対して桂枝は二、甘草は一が最適とされています。この比率をはずれると麻黄湯特有の発汗解表の作用が十分に発揮されません。『傷寒論』の処方の構成やその分量比は、古人の幾世代にもわたる長い経験により寸分の無駄もないまでに完成されていますから、その内容や分量は後人の浅知恵で軽々しく変更することは不可能です。」と記載されていました。

 ~古人の幾世代にもわたる長い経験により寸分の無駄もないまでに完成~という表現はとても重みがあります。漢方薬は何種類かの生薬で構成されています。微妙な構成比率が大切で、少し変わると効かなくなることもあります。漢方薬の2剤併用をよくしていますが、2剤で生薬の構成比率が変わるので、あらためて慎重に処方する必要があると思いました。

 外用剤でも漢方薬でも処方する際には微妙な匙加減が重要です。

2017.5.30記載

2017年4月29日 (土)

皮膚病雑記帳No.200

竜胆瀉肝湯

 

 皮膚疾患に時々、漢方薬の竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)を処方しています。竜胆瀉肝湯はツムラ社の方剤を解説した手帳によると、効能又は効果として、比較的体力があり、下腹部筋肉が緊張する傾向があるもので、排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ(おりもの、帯下)などに処方するとなっています。個人的には、皮膚科的効能または効果として、下腹部、陰股部の炎症を伴う湿疹、陰部瘙痒症、股部白癬などに処方しています。

 ところでツムラ社の竜胆瀉肝湯の構成生薬は地黄、当帰、木通、黄芩、車前子、沢瀉、甘草、山梔子、竜胆の9味です。ところが
コタロー社の竜胆瀉肝湯はこれらの生薬に、芍薬、川芎。黄連、黄柏、連翹、薄荷、浜防風が加わり、合計16味で構成されています。朮(じゅつ)には白朮と蒼朮とがあり、メーカーによって方剤に含まれている朮が違うのは知っていましたが、竜胆瀉肝湯の構成生薬がコタロー社では16味で構成されていることは知りませんでした。

 今年の3月まで鳥取大学皮膚科に3年間在籍されていた柳原茂人先生の講演を聴く機会がありました。柳原先生は医学生の頃から漢方研究会に入っておられ、若いのに非常に漢方医学に精通しておられます。講演の中で、にきびによく効く方剤が出て来て、竜胆瀉肝湯もその中に入っていました。竜胆瀉肝湯とは下焦の病態に効くものと思っていたので、これまでにきびに処方したことはありませんでした。講演終了後、どうしてにきびに効くのかを質問したところ、コタロー社の一貫堂による処方は効くとのことでした。おそらく他社のものより黄連、黄柏、連翹などが入り、清熱、抗炎症作用が強いためかと思われます。

 同じ名前でも生薬の数が異なる方剤があること、そして生薬の構成で効果が違ってくることを柳原先生の講演で知ることができました。聴いて良かったと思っています。

 

2017.4 .29記載

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