2018年3月30日 (金)

皮膚病雑記帳No.211

●円形脱毛症の漢方治療

 

 円形脱毛症は皮膚疾患の中で2~5%を占めるとされています。長期に渡る治療を要することからほぼ毎日、数名の患者さんを診ています。内服薬、外用薬、そして光線療法などをしていますが、難治な場合もあり、漢方薬を処方するケースがあります。

  松田邦夫先生(松田医院院長、大塚敬節先生の弟子)は著書『症例による漢方診療の実際』で、円形脱毛症に柴胡加竜骨牡蠣湯が有効な例が多いと述べています。師匠の大塚敬節先生は柴胡の量を倍にして用いるとよいとしています。虚証には柴胡桂枝湯が良く、また松葉による刺激療法(鍼灸治療に含まれる)が有効な場合があり、西洋医学の皮内注射療法に匹敵するもかもしれないと紹介しています。

 花輪壽彦先生(北里研究所所長、大塚敬節先生の孫弟子)はテキスト『漢方診療のレッスン』で、円形脱毛症は心身症的側面をもつ全身状態の一兆候と考えると述べています。円形脱毛症だけで処方が決まることはなく、症状、兆候、全身状態を勘案して処方を選択されています。方剤としては、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯、桂枝加黄耆湯、桂枝加竜骨牡蠣湯などを使われています。どれも気の異常を改善する処方のようです。

 二宮文乃先生(熱海で開業、皮膚科漢方の重鎮)は『皮膚疾患漢方治療マニュアル』の中で繁用処方として、柴胡加竜骨牡蠣湯(実証に用いる)、加味逍遥散(虚証用、神経の安定)、抑肝散(怒りっぽい、不眠、興奮しやすい)、桂枝加竜骨牡蠣湯(虚証、冷えやすい、柴胡の証がない)、小柴胡湯(他の処方に柴胡剤を加えるとき)柴胡桂枝湯(精神の安定をはかる)、また、駆瘀血剤を合方するものとして、桂枝茯苓丸(実証)、当帰芍薬散(虚証)、補腎作用剤として六味丸、八味丸をあげています。

 近頃、私は冬場の乾燥期になると悪化する多発性円形脱毛症の患者さんに、冬になる前に小建中湯と真武湯を服用してもらい、脱毛を軽減することができた症例を経験しました。円形脱毛症は気の異常が主な発症要因だと思いますが、虚弱体質や体の冷えも関係しているのかもしれません。

 

2018.3.30記載

2018年3月 1日 (木)

皮膚病雑記帳No.210

●大建中湯

 大建中湯(だいけんちゅうとう)は皮膚科では処方することは少ない方剤です。効能・効果は腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるものとなっています。構成生薬は人参、乾姜(かんきょう)、山椒(さんしょう)。私は腹部の帯状疱疹に伴う神経麻痺により生じた便秘に大建中湯が奏効した症例を経験したことがあります。
 

 大塚敬節先生解説の金匱要略(きんきようりゃく)講話に大建中湯に関する記載があったので紹介します。

「要するにお腹が非常に冷えて痛むということ、そして見ていると、腸がむくむく動いて、その運動が頭と尾があるような様子で、それが上に行ったり下に行ったりする、そして痛くてさわることもできないということですね。それで私が湯本(求真)先生から腹証を習ったときに『これが大建中湯の腹証だからよく診ておけ』と云われて診たのですが、ぜんぜん腹に力がなく、腹直筋も何もみられず、ただお産したてのお腹のように軟弱無力で、たたいていると、ときどき腸がむくむくと動くのです。
 そんなふうで大建中湯は腸の蠕動が非常に亢進して、うまく下にものがさがらないときに使う薬方ですけれども、したがって、お腹が軟弱無力のときが多いけれど、まるきり反対で、お腹がパンパンに張って、全然腸の蠕動運動なんか外から見えないときにも大建中湯の証があるということも知っておかないといけません。

 腹証をとらえるのはなかなか難しいですが、一定のパターンだけ覚えるのではなく例外も知っておかないといけないということだと思います。

 また耳鳴りに大建中湯が効いた経験を紹介して、「とんでもないものでも治ることがありますね。だから私たちはもっと視野を広くして、ことに昭和以降は現代医学を考慮して考えるようになったから、いろいろと考えてみなければないようですね。」と示唆に富むことが書かれていました。

2018.3.1記載

2018年1月30日 (火)

皮膚病雑記帳No.209

●附子(ブシ)が含まれている漢方薬

 今年の冬は結構寒い日が続いています。生薬の附子は体を温め、痛みを和らげる効果があります。冷えた時期には附子の入った漢方薬を処方することが多くなります。附子が含まれている漢方薬をあげてみました。

 1.麻黄附子細辛湯。構成生薬は文字通り、麻黄、附子、細辛です。主に高齢者の風邪に処方されますが、鼻炎や気管支炎、さらに帯状疱疹後神経痛などにも使われます。
 2.真武湯。構成生薬は茯苓、白朮、芍薬、附子、生姜です。さまざまな疾患に用いられますが、附子や生姜で体を温め、茯苓、白朮、芍薬で水分代謝を良くする効果があります。
 3.八味地黄丸。構成生薬は地黄、山茱萸(サンシュユ)、山薬、茯苓、沢瀉(タクシャ)、牡丹皮、桂皮、附子。五臓の中の腎が弱った時に処方されます。附子は腎の気を増す働きがあります。
 4.牛者腎気丸。構成生薬は地黄、牛膝(ゴシツ)、山茱萸、山薬、車前子(シャゼンシ)茯苓、沢瀉、牡丹皮、桂皮、附子。八味地黄丸に牛膝と車前子を加えたものです。八味地黄丸の証で浮腫傾向や夜間頻尿などが強い場合に用います

 5.桂枝加朮附湯。構成生薬は桂枝、芍薬、蒼朮、大棗(タイソウ)、甘草、生姜、附子。寒気と湿気におかされた場合に用いる処方。関節痛、筋肉痛、神経痛、手足の冷えを伴う疼痛に適応。生姜と附子が温める効果があります。

 6.大防風湯。構成生薬は黄耆(オウギ)、地黄、芍薬、白朮、当帰、防風、川芎(センキュウ)、牛膝、大棗、人参、羗活(キョウカツ)、杜仲(トチュウ)、乾姜(カンキョウ)、附子。下肢の慢性関節リュウマチ、慢性関節炎などの整形外科の疾患に用いられているようです。私は処方した経験はありませんが、多種類の生薬が入っており、効果はシャープではないように思えます。慢性に経過して栄養状態が低下し、身体が衰えた人の下肢が麻痺し、運動障害をおこしたものに用います。

 私は真武湯を体の中が冷えてしまっているアトピー性皮膚炎の患者さんに時々処方しています。附子は弱った腎に気(エネルギー)を与える重要な役目の生薬です。
          (
一部、高山宏世著、漢方常用処方解説より引用)

2018.1.30記載

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