2018年1月30日 (火)

皮膚病雑記帳No.209

●附子(ブシ)が含まれている漢方薬

 今年の冬は結構寒い日が続いています。生薬の附子は体を温め、痛みを和らげる効果があります。冷えた時期には附子の入った漢方薬を処方することが多くなります。附子が含まれている漢方薬をあげてみました。

 1.麻黄附子細辛湯。構成生薬は文字通り、麻黄、附子、細辛です。主に高齢者の風邪に処方されますが、鼻炎や気管支炎、さらに帯状疱疹後神経痛などにも使われます。
 2.真武湯。構成生薬は茯苓、白朮、芍薬、附子、生姜です。さまざまな疾患に用いられますが、附子や生姜で体を温め、茯苓、白朮、芍薬で水分代謝を良くする効果があります。
 3.八味地黄丸。構成生薬は地黄、山茱萸(サンシュユ)、山薬、茯苓、沢瀉(タクシャ)、牡丹皮、桂皮、附子。五臓の中の腎が弱った時に処方されます。附子は腎の気を増す働きがあります。
 4.牛者腎気丸。構成生薬は地黄、牛膝(ゴシツ)、山茱萸、山薬、車前子(シャゼンシ)茯苓、沢瀉、牡丹皮、桂皮、附子。八味地黄丸に牛膝と車前子を加えたものです。八味地黄丸の証で浮腫傾向や夜間頻尿などが強い場合に用います

 5.桂枝加朮附湯。構成生薬は桂枝、芍薬、蒼朮、大棗(タイソウ)、甘草、生姜、附子。寒気と湿気におかされた場合に用いる処方。関節痛、筋肉痛、神経痛、手足の冷えを伴う疼痛に適応。生姜と附子が温める効果があります。

 6.大防風湯。構成生薬は黄耆(オウギ)、地黄、芍薬、白朮、当帰、防風、川芎(センキュウ)、牛膝、大棗、人参、羗活(キョウカツ)、杜仲(トチュウ)、乾姜(カンキョウ)、附子。下肢の慢性関節リュウマチ、慢性関節炎などの整形外科の疾患に用いられているようです。私は処方した経験はありませんが、多種類の生薬が入っており、効果はシャープではないように思えます。慢性に経過して栄養状態が低下し、身体が衰えた人の下肢が麻痺し、運動障害をおこしたものに用います。

 私は真武湯を体の中が冷えてしまっているアトピー性皮膚炎の患者さんに時々処方しています。附子は弱った腎に気(エネルギー)を与える重要な役目の生薬です。
          (
一部、高山宏世著、漢方常用処方解説より引用)

2018.1.30記載

2017年12月31日 (日)

皮膚病雑記帳No.208

●当帰湯

 漢方薬に当帰湯という方剤があります。あまり使われていないようです。効能・効果は背中に寒冷を覚え、腹部膨満感や腹痛のあるものと書かれていて、胸背部の帯状疱疹後神経痛に効くかもしれないと思い、文献を検索したところ、すでに使われている報告がありました。


 「帯状疱疹による胸背部痛に対するツムラ当帰湯の使用経験(県西部浜松医療センター麻酔科 鈴木 滋 先生著 漢方診療Vol.10 No.6)」という文献で、考察の中で、当帰湯はその処方に大建中湯を含むため、冷え、腹部膨満、腹痛など、大建中湯証に当たるものに投与してよいとされ、単なる胸痛だけでなく。締めつけられるような、狭心症を疑わせるような胸背部痛で、四肢の冷感を伴うような例には奏効するとみてよいと書かれていました。当帰湯が単なる鎮痛剤としてのみならず、四肢の冷感も改善する例があることは興味深く、循環改善薬としても作用していることが示唆されるとも書かれていました。


ちなみに当帰湯の構成生薬は、当帰、半夏、桂皮、厚朴、芍薬、人参、黄耆、山椒、甘草、乾姜で、大建中湯の構成生薬は人参、山椒、乾姜で、確かに当帰湯に大建中湯が含まれています。当帰湯の使用目標は、冷え症で血色の悪い比較的体力の低下した人で、胸腹部より背部にかけて、疼痛を訴える場合に用い、特に狭心症様、肋間神経痛様の痛みがある場合となっています。大建中湯の使用目標は体力が低下した人で四肢や腹部が冷え、腹痛、腹部膨満、鼓腸のある場合となっており、当帰湯は腹痛、腹部膨満はあって、さらに胸背部痛がある場合に効果的と思われます。


帯状疱疹は胸背部に発症することが多く、胸背部痛が西洋医学的治療で改善せず、腹痛、腹部膨満を伴う帯状疱疹の患者さんに当帰湯を処方してみようと思います。

2017.12.31記載

 

2017年11月29日 (水)

皮膚病雑記帳No.207

●3週連続の学会

 

 11月は学会シーズンなのか、たまたまなのか、5日(日)、12日(日)、19日(日)と3週連続で漢方に関する学会がありました。5日は広島県福山市で日本東洋医学会広島県部会、12日は愛媛県松山市で日本東洋医学会中四国支部総会、19日は鳥取県米子市で日本東洋医学会鳥取県部会、さらに18日の夜は地元松江市で八雲漢方研究会と、忙しい3週間でした。福山、松山までは公共交通機関を利用すると時間がかかるので車で移動し、福山は片道3時間、松山は4時間くらいかかり、結構疲れました。

 福山での広島県部会は皮膚科の漢方をテーマにした講演会だったので、ぜひ聴いてみたいと思い参加しました。3人の先生が皮膚科の漢方について話され、3人3様で面白く聴きました。その一人の広島県部会会長の井口敬一先生は内科をされていますが、漢方薬をよく処方している先生は内科でも皮膚病を診ることが多く、小児の痒疹の治療例を報告されました。子供の心の異常が心(しん、五臓の一つ)の経絡を通って四肢に皮疹が出て、心の異常を改善する甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)が有効であった症例を報告されたのがとても印象的でした。小児の痒疹はよく経験するので、心が絡んだケースでは甘麦大棗湯を処方してみようと思いました。

松山での中四国支部総会では、ランチョンセミナーで、京都の高雄病院の田川直洋先生が経方医学的腹診による胸隔心下へのアプローチ ~心窩部頭側圧迫法を中心に~ というテーマで講演されました。心窩部頭側圧迫での陽性所見にて尋常性乾癬やアトピーで皮膚炎が改善している報告は驚異的でもありました。私は一般演題で、真武湯について ~自験例とテキスト、文献より~ という演題名で、発表しました。フロアーからの質問では真武湯は腎陽虚の病態で脾胃の異常ではないのでは?というものでした。高山宏世先生のテキストでは腎陽虚なっていますが、胃腸が弱った状態が多く、私は脾の異常と思っていますと返答しました。

 19日の米子での鳥取県部会では日頃漢方で切磋琢磨している倉吉の福嶋裕造先生の会長講演、「整形外科領域における漢方治療」を聴きました。鎮痛剤は漢方薬ではあまり効かない印象をもっていますが、上手く処方すればよく効くようでした。私はランチョンセミナーで「皮膚疾患、もうちょっとマニアックな漢方治療」というテーマで講演しました。
皮膚疾患で日常よく診ているアトピー性皮膚炎、尋常性痤瘡の漢方治療を中心に、基本的な漢方処方ではうまく治らない症例に、処方することが少ない、もうちょっとマニアックな処方で奏効したいつかの症例を紹介しました。処方としては真部湯、通導散、人参養栄湯、六君子湯、辛夷清肺湯などを用いました。

18日(土)の夜は松江で八雲漢方研究会があり、5日の福山で特別講演をされた近畿大学皮膚科の柳原茂人先生に「八雲立つ 皮膚科漢方の使い方」という演題で講演していただきました。解りやすく、詳しく、そして面白い講演でした。漢方の方剤の中の生薬をグループ分けして、方剤間の関連性を上手く説明されていたのが印象的でした。

3週連続の学会、有意義なものでしたが、確かに疲れました。

2017.11.29記載

 

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