2018年5月30日 (水)

皮膚病雑記帳No.213

経絡

 漢方を学んでいくと、避けて通れないキーワードの一つに『経絡(けいらく)』があります。経絡とは人体の気、血、津液(水)が運行する際の通路で、正常な気、血、津液(水)だけでなく、病邪もまた経絡を通って侵入、伝搬して臓腑を侵襲します。

 経絡は現代医学の観点から見ると、神経、血管、リンパ管、および内分泌系などの機能を包括していますが、それだけでは経絡の持つ機能の総てを説明することはできません。経絡学説は西洋医学からすると非科学的ですが、やはり漢方医学独特の重要な基礎理論の一つとして理解すべきです。経絡に関する知識を駆使すると、弁証(証を決めること)に際してより高度な理解や深い考察が可能となります。

 例えば、帯状疱疹神経痛は神経の走行に沿って出現しますが、漢方医学では、背中が痛むか、お腹が痛むかで処方を変えることができます。それは背中とお腹では経絡が異なるからです。背中は太陽系、お腹は太陰系になります。また経絡は五臓(心、肝、肺、脾、腎)と関連していて、心、肺は手経(上肢)と関連し、脾、肝、腎は足経(下肢)と関連します。皮膚病では上肢に皮疹があるか、下肢に皮疹があるかで処方を変えることができます。さらに上肢では肘の表か裏か、下肢では膝の表か裏かで経絡が異なっていて、処方を変えることができ、より細やかな治療が可能になります。

 経絡を学ぶと、東洋医学が西洋医学よりきめ細やかな医療であることを認識させられます。

            (一部、高山宏世著、弁証図解 漢方の基礎と臨床から引用)


2018.5.30記載

2018年4月28日 (土)

皮膚病雑記帳No.212

攻めることと守ること、パート2

 2年前の3月のブログに『攻めることと守ること』というタイトルで、攻める漢方薬と守る漢方薬について書きました。今回はその処方の使い方について説明したいと思います。

 
漢方薬には大雑把に分けて攻める薬と守る薬があります。前回のブログにも登場した花輪壽彦先生(北里研究所所長)はテキスト『漢方診療のレッスン』で、「攻める治療」は「瀉」(取り除く意味)の治療を言い瀉剤を用い、「守る治療」は「補」(抗病力を鼓舞する意味)の治療を言い、補剤を用いるとされています。

 攻める薬と守る薬の使い方ですが、花輪先生は、瀉剤を用いて補剤を用いるのは、「つっかい棒」を取り除き、体力を補う、どちらかといえば外科的両方を優先するやりかたで、補剤を用いて瀉剤を用いるのは、体力を十分補ってから、悪いものを取り除く、どちらかというと内科的な方法であると言われています。そして治療の実際では、こじれた病態になると単純な処方の出し方ではうまくいかない場合が多い。そこで処方の性格をよく知って、コンビネーション治療によって錯綜した病態を修復しなければならなくなると書かれています。

 私の場合は最初から瀉剤と補剤の両方を使う2剤併用療法をすることが多いです。どちらが効いたか分からないという指摘もあるかもしれませんが、瀉剤は体の表面に効き、補剤は体の裏に効くイメージを持っているので、同時に使うことは問題ないと思っています。また最初から瀉剤と補剤の両方を使うことで、症状の改善が早いように感じています。

2018.4.28記載

2018年3月30日 (金)

皮膚病雑記帳No.211

●円形脱毛症の漢方治療

 

 円形脱毛症は皮膚疾患の中で2~5%を占めるとされています。長期に渡る治療を要することからほぼ毎日、数名の患者さんを診ています。内服薬、外用薬、そして光線療法などをしていますが、難治な場合もあり、漢方薬を処方するケースがあります。

  松田邦夫先生(松田医院院長、大塚敬節先生の弟子)は著書『症例による漢方診療の実際』で、円形脱毛症に柴胡加竜骨牡蠣湯が有効な例が多いと述べています。師匠の大塚敬節先生は柴胡の量を倍にして用いるとよいとしています。虚証には柴胡桂枝湯が良く、また松葉による刺激療法(鍼灸治療に含まれる)が有効な場合があり、西洋医学の皮内注射療法に匹敵するもかもしれないと紹介しています。

 花輪壽彦先生(北里研究所所長、大塚敬節先生の孫弟子)はテキスト『漢方診療のレッスン』で、円形脱毛症は心身症的側面をもつ全身状態の一兆候と考えると述べています。円形脱毛症だけで処方が決まることはなく、症状、兆候、全身状態を勘案して処方を選択されています。方剤としては、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯、桂枝加黄耆湯、桂枝加竜骨牡蠣湯などを使われています。どれも気の異常を改善する処方のようです。

 二宮文乃先生(熱海で開業、皮膚科漢方の重鎮)は『皮膚疾患漢方治療マニュアル』の中で繁用処方として、柴胡加竜骨牡蠣湯(実証に用いる)、加味逍遥散(虚証用、神経の安定)、抑肝散(怒りっぽい、不眠、興奮しやすい)、桂枝加竜骨牡蠣湯(虚証、冷えやすい、柴胡の証がない)、小柴胡湯(他の処方に柴胡剤を加えるとき)柴胡桂枝湯(精神の安定をはかる)、また、駆瘀血剤を合方するものとして、桂枝茯苓丸(実証)、当帰芍薬散(虚証)、補腎作用剤として六味丸、八味丸をあげています。

 近頃、私は冬場の乾燥期になると悪化する多発性円形脱毛症の患者さんに、冬になる前に小建中湯と真武湯を服用してもらい、脱毛を軽減することができた症例を経験しました。円形脱毛症は気の異常が主な発症要因だと思いますが、虚弱体質や体の冷えも関係しているのかもしれません。

 

2018.3.30記載

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